それからどうにかこうにか一か月が経過した。

 郡山付きとはいえ、御曹司の尚貴にとってそれは楽ではない暮らしだっただろうが、愛里の予想に反し、尚貴は音を上げたりはしなかった。

 漫画新人賞を受賞して漫画の仕事をするのだ、という希望が、彼の慣れない生活を支えている。それは愛里にもなんとなくわかった。

 この日は尚貴が応募していた女性雑誌の新人賞の結果発表日だった。

 朝早く尚貴から「不安(>_<)(>_<)(>_<)」とか、昼休みにも「絶対受賞したい!!!」などといったLINEメッセージがひっきりなしに届くので、愛里は仕事をさっさと片付け、急ぎ足で尚貴の家に向かった。

 「お邪魔しまーす」と慣れたように玄関の扉を開けると、パソコンの前にかじりついて更新ボタンを押しまくる尚貴の姿があった。

「どう?」

 尚貴の似合わなすぎる袢纏姿もだいぶ見慣れてきたなと感じつつ、愛里も画面を覗き込む。