ところで、郡山の登場で愛里はふとあることを思い出した。

「あ、これ使おう! なおさん」

 机の引き出しから取り出したのは一通の封筒だ。

「これ、郡山さんから受け取った手切れ金なんだ。でも、もちろん一円も使ってないからね。連絡取っちゃったし……。なのでなおさんにお返しするね!」

 なかなかいいタイミングで返すことになったと思う。

 厳密には返す相手は違うような気もするが、そこはまあ、気づいていないフリをして尚貴に握らせる。

「でもこれ、出所は藤田ってことだよね」
「後で返せばいいんじゃない?」
「そうしようかな!」
「そうしよう!」

 うんうん。きれいごとだけでは生きていけない。
 郡山の視線が痛いが、無視を決め込む。

 中を確認すると、三十万円が入っていた。

「なおさんの所持金と合わせると、四十万円だね」
「そうなるね」