それから愛里は尚貴の家にちょくちょくお邪魔するようになった。

 行くたびに郡山からマナー講座や指導をされ、あれで終わりではないのか……トホホ、と思ったりもしたけれど、おかげでだいぶレディな振る舞いが身についてきた。

 漫画を描くための作業部屋は、道具も揃いに揃って快適だし、郡山やメイドに頼めば大抵のものは揃えてくれた。

 至れり尽くせりの恵まれた作業環境の中、愛里と尚貴は時間の限り作品を磨き合った。

 それぞれ仕事が終わり次第、作業部屋に集合して漫画を描く。

 尚貴も夢を現実のものにするため、愛里のアドバイスを受けて漫画新人賞に応募することを始めた。

 二人で過ごす時間が増えて、一人の時間の方が珍しいような状態だ。

 これって、どんな関係なんだろう? という愛里の疑問はいまだに解消されていないままだったが。

(家に呼ばれているって思うと特別な感じもするけど、大きなお屋敷だから、なんていうか、全然家って感じしないんだよね)

 作業が白熱して帰るのが遅くなり、また泊めさせてもらったりもしたが、愛里以外にも泊まっている客人が本当にたくさんいた。やはり一般家庭とはだいぶ違う。

 尚貴の家で冬コミ原稿合宿をしようなんて話も出て、東京・大阪からはなやん達創作仲間も呼んじゃおうと盛り上がったり――


 そんな中、事件は起きた。