「どんなとこがわかりにくい?」
「んー、全体的に……画集なら問題ないけど、多くの人はよくわからないまま綺麗だなーで終わっちゃうと思うな」
「なるほど」
「十万人を面白いと思わせるには、見せ方をもっと改善するべきだと思う」

 愛里は有名な漫画を引用しながら、読ませる漫画の具体的な例を提示していく。

「ご意見参考にします」

 尚貴は変な意地を張ることもなく、思った通り素直に聞き入れてくれた。
 はなやんのように趣味で描くと言われたら指摘する気はなかったけれど、そうじゃないなら言う価値がある。

「あとは売れ筋のテーマかどうかも考えた方がいいと思うけど、でも描きたいものもあるもんね。その点なおさんは、売れ筋なんて無視しても、お金でもなんでも使っちゃえば、売ることはできるから、いいな」

 お金があるなら、自費出版でもすればいいと思う。まあ、売れ筋じゃない漫画を描いて無理に売ったとしても、ヒットにはならないか。それじゃ不満なんだろうな。
 
 ――と思ったら、尚貴は首を横に振って、愛里の予想とは少し違うことを言う。

「お金を使って叶えたんじゃだめなんだ。それじゃ、今までの人生をまた繰り返すだけになる。僕は自分の漫画で、藤田というしがらみから抜け出したいと思っているのに」

 しがらみから抜け出す?