「郡山さんっ、待って、待って!」
「なんだ。時間ないんだ。そのままじゃ藤田家で食事なんて一生無理だぞ」
「でも、覚えられないよ~」
「集中しろ。なんとかなるなんて幻想は捨てるんだ」
「そんなこと」
「うまくなりたいとか口では言いながらも、また間違えてもまあいいか、みたいな浮ついた気持ちがあるから何回も同じこと繰り返してんだ。興味本位とか遊びのつもりなら坊ちゃんにやってもらえ!」

「うっ」
 返す言葉もない。

 うまくなりたいと言いつつたしかに優しいなおさんに甘えていた。あと、場所のせいか「練習」って感じも抜けなくて、失敗してもいいやって思っていた節はあった。

 さらには興味本位とか、遊び半分の気持ちがあったことまでズバズバ言い当てられ、自分の愚かさを痛感する。なおさんにははっきり言ってほしいとか思いながらも、実際に言われたら凹む自分って……穴があったら入りたいよ。

「はいわかったら、や・り・な・お・し」
「鬼教官……っ!!!」

 だけどそうだたしかに望んだのは自分である。

 郡山の指摘は意地悪なようでいてその実、愛里が即席にでも立派なレディになるために必要なことを過密に詰め込んでくれている。

 だから食らいつくしかない。