んー……。

 でも、メイドさんにせっかくここまで用意してもらったんだし、なおさんと一緒に食事をとるためにはやっぱり最低限は身に付けるべきだし、せっかくの機会は有効活用するべきだと思う。

「大切なことはね、一緒に食事をしている人と楽しく過ごすこと。それだけだからさ」
「う」
 尚貴に言われて愛里はレストランで相手を悲しませてしまったことを思い出す。
「それはごめんなさい……」
 
 でも。

 いくら相手が許してくれて、自分の無作法を気にしないことが相手の為だとしても、それなりの高級店に入った時には、それなりの振る舞いを身に付けていたかった。今まではそんな需要がなかっただけで、需要が出てきた今となっては、立派なレディとしてかっこよく振る舞いたかった。自分の振る舞いのせいで相手の足を引っ張って恥をかかせたりだって、したくない。

 だけど、そんなことはなおさんは望んでいないのかな。
 今まで経験を積んでこなかった自分が悪いのに、こんなことで困らせてる……?