ゆらりと発車。
 クラシック音楽が流れる車内には慣れてきたけど、次なるステップ「ご実家」が重くのしかかる。食事もお呼ばれすることになっていた。

「食事には少し早いけど、もう向かっていいかな?」

 尚貴が問いかけてくる。愛里は頷いた。

「うん。あー……緊張する……」
「リラックス、リラックス。あ、うちでテーブルマナー講座する?」

 微笑みながら尚貴が提案してくれる。

「お願い! ぜひお願い!!」

「オーケー。あ、カクテル用の漫画持ってきてくれたかな?」
「持ってきたよ」
「バーテンダーが読みたがっているから、それだけ先に渡させてもらうね」
「わかった」

 家までは四十分程かかる。その間、尚貴が愛里の作品を見たいというのでその場で見せた。結局選びきれずに三作品持ってきてしまった。異世界魔法少女モノと、学園恋愛モノと、王宮恋愛モノ。

 読んでいるうちに尚貴が買いたい買いたいというので、そのまま尚貴の家に置いていくことになった。お代はキャラカクテルでいいよと言ったのだが、キャラカクテルは夏コミのお礼だということで、結局本代をもらってしまう。