予告時間きっかりに尚貴から到着のLINEが届いた。愛里はソファから立ち上がってエアコンを切り、ドキドキしながら玄関を出る。
 家の駐車場の前に黒塗りの車が停まっていて、中から弾けるようにドアが開いて尚貴が出てきた。

「エリンギちゃん!」

 花のような笑顔の尚貴に、こっちも自然と笑顔になってしまう。尚貴は昨日とはまた違ったおしゃれなスーツを着ていた。仕事場からそのまま来たのだろう。

「なおさん、仕事お疲れ様」
「ありがとうエリンギちゃん。さ、乗って」

 路上駐車のため、運転手は運転席に乗ったままで、代わりに郡山が座席にエスコートしてくれた。お尻から乗り込み、足を揃えて地面から浮かせる。そして向きを変えて乗り込み終了。うん。うまく乗れました。

「お迎え、ありがとうございます」

 運転手にも礼を言い、愛里はふうっと背もたれにもたれる。上半身を男性の方にやや傾けると可愛いんだとか。まだ余裕があるので、本で学んだことをいろいろ試してみる。