アラームが鳴るより早くぱちりと目が覚めた。
 まだ朝の九時前。8:55、よし、起きよう。行動開始だ。

 本日の仕事は休み。丸井社長から臨時休暇をもらったのを活かして、尚貴の仕事が終わって迎えに来る夕方までにやるべきことがたくさんあるのだった。

 まず、尚貴の家に着ていく服を選ぶ作業。
 安っぽくないもので、スカートが短すぎないもので、でもとびっきり可愛いものを引き出しの奥から発掘する。普段はやらないアイロン掛けを丁寧に行い、ハンガーを通して汚さないように高い位置に掛けておく。

 はい、次!

 ご実家にお邪魔する前に、やはりどうしても基本的なマナーを知っておきたかった。尚貴は気にしなくていいと言ってくれるだろうことは想像できたけど、愛里自身が落ち着くために。もちろん、付け焼き刃で、本物のご令嬢には遠く及ばないだろう。でも、最大限やってから行こうと思い本屋へレッツゴー。

 行きつけの漫画本コーナーをスルーし、冠婚葬祭のコーナーや女性向けエッセイというコーナーに生まれて初めて立ち寄る。