「ここならエリンギちゃん、絶対気に入ると思ったから……」
 尚貴は意気消沈したように、そのまま俯いて黙ってしまった。

「なおさん……」

 気に入っていないわけじゃない。

 ていうか本音を言えば、なおさんと食事ができるならどこでもよかった。

 それこそチェーン店居酒屋とかファミレスとかだってもちろんよかったし、逆にある程度の内容じゃなきゃ嫌だってなおさんが思うならお財布をはたいて背伸びだってするつもりだった。

 でも、いざ、こんな素敵な……あまりにも素敵すぎるところに連れてこられて、めったにないご馳走を振る舞われて、委縮してしまった。

 自分の立ち振る舞いも、これでいいのか、合っているか気になって、なおさんと自分との距離を感じたりして、気が引けて。

(だって、それは、なおさんによく思われたいからだよ)

 よく思われたいから。
 絶対失敗したくないから。