「今までせっかく敬語じゃなかったのに、どうして急に敬語になるの?」
「えっ」
 本当だ。自然と敬語になっていた。

「ああっ。なんでだろう……? んと、なおさん、やっぱりすごい世界の人なんだあって思いまして……はい」
 愛里が開き直ってへりくだると、
「別にそんなことないよっ」
 尚貴はちょっと拗ねたように唇を尖らせる。

 人形みたいに整った顔に、人間味が滲む。

 なおさんって、こんな表情もするんだなあ、なんて、その顔に見惚れたりして。そして、こんな顔もやっぱり美人だなあって、ますます恐縮してしまう。