「住む世界が違うなんてそんなことは、僕は思っていませんよ」 尚貴は顔を上げると、ぐいっと手を引き、抱き寄せる。 夏仕様なのか、通気性の良さを感じる質感のスーツが愛里の肌をかすめる。 「ごめん。今日、このあと、時間ある?」 耳元で尋ねられた言葉に胸が熱くなる。