愛里はふと不思議な気分を覚えた。 郡山にここまでされたのにもかかわらず、尚貴は彼に対し敵意を向けたのは初めの一瞬だ。今はもう憤るわけでもなく、ただ挑むような目で見ているだけだし、そして郡山も、尚貴を邪険にするような様子はなかった。 そして尚貴は何かを考え詰めたような顔をして立ち尽くしている。 すると郡山は僅かに眉根を寄せ、聞き分けの悪い子どもを諭すような口調で言った。 「では旦那様に直訴なさいませ」