着席を促されたので、社長に倣って座る。郡山は立ったまま名刺を机の上に置くと、 「東京では大変お世話になりました。ご連絡いただければ、こちらからお届けにあがる予定でございましたが、ご足労いただきありがとうございます。こんなに早くおいでくださり、恐縮です」 と、深く頭を下げる。 慇懃な態度とは裏腹に、愛里はどこか遠回しに、がっつきやがってと非難されているような気がした。重い封筒を渡された苦々しい記憶が脳裏によぎる。