「すみません、社長……。あの、言いづらいんですが」
 
 いろんな意味で言いづらかった。期待に満ちた顔でこちらを振り返る社長。もうすぐ六十になるという白髪交じりの社長に、なんでこれからコミケと色恋沙汰の話をしなければならないというのだろう。

「な、なんだって……!? それじゃ、FUJITA電機の息子さんが、愛里ちゃんに会うためにメールを流しているっていうのかい!?」

「そうとしか思えません」
 あんな鉄屑で作ったおもちゃの写真が今も東海三県に拡散されていると思うと恥ずかしすぎて早く止めさせたい。