コミケ、それは戦場。

 買う側――一般参加者達はその日だけ限定販売されるグッズを手に入れるべく、小銭という名の実弾を用意して会場扉の前に隊列をなす。

 売る側――サークル参加者もまた戦士である。彼らの背中のリュックからは丸めたポスターや什器が砲身のごとく突き出す。一足早く会場入りして迎え撃つ準備をする。

 鈴木愛里(えり)もまたそんなサークル参加者だった。

 東京ビッグサイトという名前の巨大な建造物を前に、すうっと胸がすく。

(今年も来たぞ~っ)
 そんなことを叫びたくなる。ここで記念に写真を撮っている人もいた。