どこか行くつもりなんじゃないの?とニッコリ微笑んだままの昴。
昴にはこれから俺のとる行動などお見通しだったようだ。
「…そうだな、行ってくる。」
あえてなんで分かったのかなどということには触れず、俺は理事長室を出た。
とりあえずなんも言ってないけど、春樹には昴がさっきのことを説明してくれるだろう。
そう思いながら、俺は体育館裏を目指す。
「──ろよ!」
「──桜龍様に─」
体育館裏に近づけば予想通りの声が聞こえてきた。
さらに近づけば女子生徒── 一ノ瀬蛍を囲いこんでる5人の女子生徒の姿。
俺はとりあえず影に隠れ、スマホを用意した。
そしてムービーを取りながら一ノ瀬蛍を観察する。
一ノ瀬蛍は特に動じた様子はなく、静かに真っ直ぐと真ん中の女の目を見据えていた。
…相変わらず瞳には光が宿ってなかったが。
ムービーを撮っている間に言い合いは進んでいた。


