「すいません、遅くなって。岩田先輩大丈夫ですか?」
「あー、いつもの様に好きなだけ話して満足したと思う。八嶋も遅くまでお疲れ様」
さっきアツシさんが言っていた通り、八嶋はアイデアに優れていて、2年目ながら上から期待されている。
その為に上からの指示は多く、毎日残業して頑張っている姿をよく見る。
「いや、早く安尾先輩みたいに手際よく仕事できるようになりたいです」
「え、俺そんなに手際よくねーよ?」
「何言ってるんですか、みんな言ってますよ。先輩は丁寧で無駄がなくて、でも気が利くから信頼できるって」
先輩を立てるためのお世辞なのはわかっているが、わかっていても気分がいい。
八嶋は出来た後輩だ。
「お前こんないい奴なのに、そんなお前と別れる元カノって、どんな女だよ」
酔っているせいか、図々しくそんな事を言ってしまった。
しかし八嶋は嫌な顔せずに答えた。
「いや、俺が悪いんです。高校から結構長く付き合ってたんですけど、彼女が短大卒業して先に社会人になって、忙しさとかわかってやれなくて。俺から言っちゃったんですよ、別れたいって」
「え、そうなの?」
「後でめっちゃ後悔したんですけど、もう連絡取れなくなっちゃって。情けないっすよね」
「いや、そんな事ねーよ」
それなら俺の方が情けない。
振られたのに、7年もずっと忘れられてない。
「安尾さんもいるでしょう、忘れられない人」
突然八嶋がそんな事を言って来たので、心を見透かされたのかと思って机上の空き瓶を倒してしまった。


