「確かにそうだけどさ、いつも睨まれてて怖いんだよね……」

私がそう言ったのが田鍋さんに聞こえてしまったのか、田鍋さんは試合中にも関わらず私に鋭い視線を送ってきた。

「ひっ…」

「こ、怖っ……」

「ね…すっごく怖いでしょ」

私は田鍋さんに聞こえないように、今度は小声で言った。

「うん…。颯君に相談したらどう?」

「でも、睨まれているだけだし……」

「だけどさ、この前だって颯君の優しいところにつけこんで、無理矢理キスしたんでしょ?なんかされてからじゃ遅いよ?また別れる寸前みたいになっちゃうかもしれないし」

「うーん……」

ピピーッ!と笛の音が響いた。

「試合終了ー!得点を報告してきてー!」

体育教師が大声で呼びかける。

「はーい、じゃあチーム入れ替えて次の試合始めるよー!」

今度は私達が試合をする番だ。

「行こう、葉月」

「うん」

コートに向かう私を見て、田鍋さんがまた睨んだ。

(怖い…。やっぱり、颯に相談したほうがいいのかな…?)