そう言って葉月がナイフを持ち、私に向ける。

「私ね………多分、颯のこと、好きじゃなかった」

私の言葉に驚いた葉月は、手の動きを止めた。

「…………は?」

「途中までは、確かに好きだったかもしれない。でも、葉月が死んでから…………なんか変だなって心のどこかで感じていたんだ」

「どういうこと……」

「葉月が死んでから、私は颯しか頼る人がいなかった。それまでは、ずっと葉月に頼っていたから……。

だから、私は颯は運命の相手なんだからって、自分に言い聞かせていた。私達は、【彼氏と別れる】っていう未来を覆した、運命の二人なんだって、思い込ませていた。

だけど、なんでだろう……葉月のことはずっと信じられていたのに、颯のことはどこか信用できなくて…………。

それでね、今気付いたの。

もしかしたら、私が好きなのは颯じゃなくて、葉月なんじゃないのかって」「は………なにそれ……そんなの………い、今更…すぎるよ……。困るよ……」