颯は、楽しそうに男子達と喋っている。

「颯……笑ってる…」

そういえば、最近颯は私の前で笑ってくれないな……。

そう考えると、また涙が流れそうになる。

いけないいけない。

私は、目を擦った。

泣いている場合じゃない。

今は、颯を守らないと…!

しばらく歩いていくうちに、颯は男子達と別れ、一人になった。

颯の周りに不審者がいないかどうかを確認する。

ジャージ姿で犬の散歩をしている老人、買い物袋を持って歩いている女性、スマホをいじっている学生……。

その中に、一人だけ明らかに怪しい格好をした人物がいた。

黒いキャップと季節はずれのサングラス、そしてマスクをしていて顔はよく見えない。

「怪しい…」

私は、颯に気付かれないようにしながらその人物の背後に回った。

颯が道を右に回ると、そいつも颯のあとについていく。

こいつ…明らかに颯のことを狙っている……!