「由美香 、おはよう!」

嗚呼,また聞こえる.
毎朝玄関から私を呼ぶ声.
迷惑に感じているのを千愛は知る由もないだろう.
スクールカバンを手に持ち,靴を履き玄関の扉を開ける.
そこには私とは対照的にキラキラと輝く千愛が居た.
大きな瞳に小さな顔,まさに人気者という感じだ.
毎朝「藤島可愛いよな」等と男子のひそひそ話を耳にするのももう飽きた.
中には「高森も可愛い」と言ってくれる人が居るが、もと付ける時点でおまけ確定.
本当にうんざりする.
そんな千愛と学校へ向かい校門を通ると,声がかかった.
「千愛おはよう!」
私は所詮おまけ的存在,人気が無い訳では無いが千愛と比べれば天と地の差だと思う.
その為友達の数も違うのだ.
声を掛けられた千愛は一言,私に
「じゃあ,またお昼休みに!」
と言い友達の方へ駆けて行く.
小さく手を振り駆けて行く千愛を校庭の真ん中で見つめる私.
「朝,一緒に行く意味ってあるのかなぁ」
今迄何度そう思った事か,千愛はどうせ知らないだろう.
そして私は1人,教室へと足を進めた.