今日はいよいよあの店に行く。


「き、緊張する…」


「そうだな。

詩笑のお父さん。

長い間挨拶に行けてなかった。」


「大丈夫、優しいから。

…まぁ迅さんに対してはどうか知りませんが。」


「うっ」


「だ、大丈夫だよお父さん!

…多分。」


「う゛っ」


「ほら、着きましたよ。

背筋を伸ばしてください。」


「胃が痛い…」



チリーン


「いらっしゃい。

と、この前の子か。」


「お久しぶりです。

今日は二人連れてきました。」


「おや。」


そういい二人を前に出すと、

おじいさんは詩音を見て驚いたようだった。


「あ、あの!

私、笑海さんと結婚致しました夜月迅です!

そしてこの子が娘の詩音です!」


「笑海の子ども…。

わしの、孫…?」


「おじいさん。」


「あぁ、真くん。

これは…。」


「実は笑海さんに思い当たる節があり、

知り合いを調べたところこの二人に行き着きました。

確実に笑海さんの娘さんです。」


「笑海の…

あぁ、こんな嬉しいことが…

笑海は、生きていたんだな…!」


おじいさんは肩の力が抜けたように座りこんだ。


「お、お父さん大丈夫ですか。

肩を…」


「あぁ、ありがとう…」


おじいさんを奥の部屋に運び座る。


それからはちょっとした修羅場だった。



笑海さんは記憶を失い詩笑として生きていた事。


詩笑さんはもう亡くなっている事。


詩笑さんと結婚した迅さんを嫌うおじいさん。


詩音に色々食べさせ物をあげるデレデレおじいさん。


俺に向けられる本当に彼氏ではないのかという疑いの目。


最終的には三人と一人で話していた。


帰る際には家族で出掛ける予定を立てていた。


終始笑顔だった詩音は帰路でも興奮気味だった。


詩音の笑顔を見ると嬉しくなったが、


自分の家族のことを思うと少し胸が痛くなった。



いるなら会いたい。

名も知らない妹。