Super Star

あれからすぐにお昼休み終了のチャイムが鳴って、私は教室に戻った。

そして再び嫌な視線を浴びながら、なんとか午後の授業をやり過ごし、転校1日目を終了させた。

そして今、学校から一旦家に帰って着替えた私は、ある大きな会場に来ている。

カシャッ

カシャッ

カメラのフラッシュをたく音がたくさん聞こえてくる。

そしてそれらのカメラはすべて、私に向けられている。

眼鏡なんてもちろんかけていないし、髪の毛は明るい茶色。

学校に行くときの黒色の髪はウィッグだ。

つまりこれが私の、本当の姿。

「ユズちゃん、アメリカでの2年に渡る撮影はどうだったかな??」

「今のお気持ちは??」

「アメリカでの映画撮影を終えた感想は??」

そう口々に言って、私にマイクを向けてくるたくさんの芸能リポーターたち。

そして私はそれに笑顔で答える。

「アメリカでの撮影は、初めてのことばかりで戸惑いましたが、大変貴重な経験をさせていただきました」

さらに質問を続けられる。

「これからの活動は、日本に戻りますか?それとも再び海外へと進出されますか?」

「今後は、活動の拠点を日本に戻したいと思っています」

「となると、日本中のテレビ局で引っ張りだこでしょうね」

「そう言っていただけると、とても有り難いです」

にっこり笑って言う私に、レポーターの人たちも笑って質問をする。

ユズ………

それは、私のもう一つの名前。

私、佐藤結月の芸名。

そう、実は私は女優なのだ。

小さい頃から女優・ユズとして仕事を始めて、約2年前。

ある主演映画の撮影をするためにアメリカへと渡り、帰ってきたのがつい先日のこと。

そして今日は、私の帰国を伝えることを兼ねたマスコミ向けの映画制作発表試写会なのだ。

たくさんの質問攻めにあった後、

「最後に、映画について一言お願いします」

「この映画の制作にあたって、私はたくさんの人に支えられ、助けられました。撮影に2年という長い月日をかけた、たくさんの思いが詰まったこの作品は、笑いあり涙ありで、家族の愛に感動すると思います。この作品が、たくさんの人に愛していただけることを私は願っています」

そうゆっくりと、私は言った。

「ありがとうございました」

約一時間に渡る試写会は、こうして幕を閉じた。

これが私、佐藤結月の秘密。

ユズは、昔から仕事をしているだけあって、さらにアメリカに撮影に行ったということもあって、かなり有名だから、そんな私が学校に通ってるなんてマスコミになどにバレたら、学校に大変な迷惑をかけることになる。

それに、ユズは正体不明の女優なのだ。

小さい頃から仕事をしてはいたけれど、本名も年齢も何もかも、いわゆるプロフィールというものは一切公表していない。

そして私はよく、大人っぽく見られるため巷ではユズは20歳だ、とか言われることもある。

それなのに、もし何かの拍子に私がユズだとバレたら、世界のユズのイメージは一気に崩れ落ちるだろう。

だから学校で私がユズだとバレるのも、マスコミにユズが佐藤結月という女子高生だとバレるのも、どちらもダメなのだ。

この秘密は、絶対に隠し通さなくてはならないのだ。

だから今日、学校の屋上で出会った彼、蓮はいいなと思った。

自分が俳優だって学校でも普通に言えて。

誰にも秘密にしなくていい、嘘を吐かなくていい、そんな蓮が少し、羨ましかった。

きっと蓮、自身にとっては彼が好きな人に気づいてもらわなくては、なんの意味もなさないのだろうけれど。

そんなことを考えていたからだろうか、それとも試写会が終わってから、少し時間が経ったにもかかわらず、私が会場から出なかったせいか、ふいに一人の男の子と目が合った。

合って………しまった。

切れ長の大きな黒目に、筋の通った鼻。

スタイル抜群で、すらっと長い手足に長身の彼。

………蓮だ。

蓮は目を大きく見開いた。

それを見て私は、あぁ終わった。

そう思った。

バレた、だろうって。

だって今日のお昼にも目が合ったし、こんなに見られて驚かれて……。

本当に、終わった。

「あ、あの!ユズさん……ですよね?」

そう言って、蓮は話しかけてきた。

「あ、あのね蓮くん……?」

私は、しどろもどろになってしまった。

「え、僕のこと知ってくださってるんですか??」

「え?」

あれれ???

「僕、ユズさんの大ファンなんです」

そう言って私を見つめる蓮の目は、今日のお昼に見た時よりも断然、輝いていた。

あれれれれ????

「あ、あの…」

これは、どっだ?

バレてる?

バレてない??

「あの、僕と握手してくれませんか?」

「あ、はい」

私が手を差し出すと、蓮は恐る恐るといった感じで手を握ってきた。

これは……

「ありがとうございました!!」

そう言って走り去っていった蓮。

ーーーーこれは、バレてないな。

そう、思った。

たぶん、バレてない。

バレてたら、蓮は自分のことを"僕"なんて言わないだろう。

蓮が僕…とか。

なんか可愛らしくて笑える。

けれど、確かにバレなくて当たり前か。

学校ではかなりの変装をしていたわけだし。

眼鏡もしてないし、髪の色も違うし。

これからもなるべく、会わないようにすれば大丈夫だ。

そう思ったこの時の私は、相当甘かった。