──2人の再会の時には、必ず空に三日月がいる。

俺水谷怜悧斗(みずたにれいと)と、寺沼真空華は同級生。今日、2人の通う私立月見野学園で再開した。
...再開した?そう。実は真空華は小学生の頃からの顔見知りで。今更こんなこと言うのは恥ずかしいけど初恋の相手だ。
『小学生の頃から好きだったの!!?』
なんて言わないで。あの時の悔しさを思い出してしまうから。

真空華は小4の時、どこか知らない街──俺の知らない世界へと引っ越してしまった。噂によるとそれだけではなく割とちょくちょく引っ越しをしていたそうだ。結局俺の中にこの想いを閉じこめ告白することは無かった。でも幼い頃の俺は諦めない。いつかきっと会える。そんな根拠の無い想いを抱いて生きてきた。
神様は今思えば俺の願いを叶えてくれたのかもしれない。今実際、俺は彼女のいる教室へと足を運んでいる。
通学路はいつもより色味を帯びていて春の暖かい心地がした。こんな日は久々だ。
俺のこの目で確認した。
2年A組。
今日は高2の始業式。彼女──というのはまだ早いか。真空華の名前が俺と同じ欄に書かれていたのだ。
真空華は覚えているだろうか。
冴えない小学生の男のことなんて覚えていないのが普通だろう。まさかほかの人と付き合ってたり。
あれこれ考えながら桜並木を通り過ぎるとあっという間に乗降口だ。ひらひら舞った桜の花びらを丁寧にとり、新しい下駄箱に靴を閉まった。