あの日、ニコちゃんを見送ってから生徒会室に向かった俺は、すでに揃って作業していたみんなに、ニコちゃんとの出会いを事細かに話した。
 ニコちゃんへの愛しさが爆発し、話さずにいられなかった。
 語っても語っても語り足りない俺に対し、仲間からは、
「大志くんがこんなにウザいの、初めてなんだけど」
「ズバリ、初恋とか」
「この歳で初恋かあ」
「遅すぎるだろ」
「今の話だと、助けて終わりじゃん」
「進展は望めないな」
「コイツにここまで気に入られた彼女が、不憫になってきた」
「今後のことを思うと、その子、この学校を落ちた方がよくない?」
 と、散々なことを言われた。
 今日、合格発表は午前9時から。
 合格者説明会は正午から。
 ニコちゃんに会えると思うだけで、もう心臓がドキドキする。
 俺がニコちゃんに会って話せるチャンスは、体育館前に設置されたテントで行う説明会の受付のみ。
 まずは自然に、「あのときのキミだよね。お守りを落とした……。俺のこと、覚えてる。合格おめでとう」と好印象で伝えて、仲良くなるキッカケを掴むんだ。
 昨日、何度もメンバーと練習した。
 大丈夫。
 絶対にできる。
 やってみせる。
 俺は自己暗示をかけながら、学年主任が出してくれたお茶に手を伸ばした。
 前に座った学年主任に一礼してから、湯飲みに口をつける。
 これからが本番だ。
 お茶の熱さに、俺は気を引き締めた。