「ひと目見たときから思っていましたが、お綺麗な秘書さんですね~。三日どころかずっと見ていても飽きそうにないですな。むしろ見ていたい」


あからさまにデレッとする彼の顔を見た瞬間、完璧に演じていた秘書魂にピシッと亀裂が入る。

おいオヤジ、とツッコみたくなっても当然態度には出さないので、上機嫌の専務はさらに続ける。


「社長はイケメンだから耐えられるでしょうけど、こんな方が毎日一緒にいたら、僕みたいな凡人は仕事どころじゃなくなりますよ。はっはっは」


いや、仕事はしろ。

鼻の下伸ばしてないで働きなさいよ。馬面にさらに磨きがかかっていること、教えてさしあげたほうがいいかしら。

生憎、私たちのボスは顔がいいだけじゃなくて、硬派で素敵な男だから色仕掛けにも乗ってこないの。私のプライドがボロボロになるくらいにね。

……と、若干自虐も交えて毒づく私。ツッコミどころのある相手に対して、私の心の中でいつもこうなっていることは、ほとんどの人が知らない。

私は毒舌で愛想の悪い本性を隠し、人前ではお上品な仮面を被っているのだから。

今も表向きは「お褒めいただき、光栄です」と常套句を口にして、恥じらうような笑顔で会釈した。