それなのに、耀はいつでも優しいままで、私のことを一度も悪く言うことはなかったのだ。

私も、彼みたいな人間になりたい。そう強く思った。

しかし、完全に作られてしまった性格はどうにもならない。ならば、せめて口の悪ささえ直せば、相手を傷つけることはなくなるんじゃないかと考え、表面上は愛想のいい今の自分ができあがったのである。

これがよかったのかどうなのか、正直わからないが、以前に比べればずっと人間関係は順調だし、生きていきやすくなったのは確かだ。

今の私があるのは、耀のおかげか……。

ゆっくり歩きながらぼんやり思いを馳せていると、紗菜の穏やかな声が耳に届く。


『なつみは加々美くんとのことがきっかけで変わったけど、私はなつみのおかげでいいほうに変われた。だから感謝してるよ。ありがとう』


突然お礼を言われ、私は目をしばたたかせた。

私のおかげって、なんのことだろう。十五年以上も一緒にいればいろいろなことがあったから、そのうちのどの出来事が紗菜に影響を与えたのか、すぐには思い当たらない。