『詳しいことはまた改めて聞かせてもらいたいけど、とりあえず彼となにかあったってことね』


どうやら、私が連絡した大まかな理由については薄々感づいているらしい。

会ったら話そうと思っていたから、「まぁそんなとこ」と正直に認めた。こんなふうに、私がなんでも打ち明けられるのは紗菜しかいない。

私のことをよくわかっている彼女は、まだ相談する前だというのにすべて悟っているかのごとく言い切る。


『今も昔も、なつみにこんなに影響を与える人って加々美くんくらいでしょう』

「……そうかも。いろんな意味で、あいつは特別」


今日は一向に温まらない手をポケットに入れ、本音をぽつりとこぼした。

紗菜の言う通り、私は耀から影響を受けて人との付き合い方を変えた。

小学校を卒業したあと、他の男子から思いもよらない事実を聞いたのだ。“加々美は、いつでも綾瀬の味方をしていた”と。

誰かが私の悪口を言っていたら、“なっちゃんはいい子だよ”とフォローしたり、私がひとりでいるところを見れば話しかけたりと、ずっと気にかけてくれていたのだそう。

それを知ったとき、これまでと比べものにならないくらいの後悔と罪悪感を抱いた。彼が私にとって大事な存在だったことに気づかず、嫌な態度を取り続けてしまった自分に、酷く辟易した。