『どうしたの? なつみが急に飲みに誘ってくるなんて珍しい』

「あ、うん……。最近慣れないこと考えすぎて、憂さ晴らししたくなったっていうか」

『もしかして、恋愛関係? イケメン社長さんとなにかあった?』


わくわくした調子で問いかけられ、またしても地雷を踏まれた私は、鼻で笑って「もう社長は関係ないから」と否定した。

気を取り直して、昨日この道を手を繋いで歩いたことを思い出しながら言う。


「懐かしい人と再会したの。覚えてる? 加々美 耀」

『えーっ、加々美くん!? もちろん覚えてるよ、女子の憧れの王子様!』


耀の名前を出すと、興奮気味の声が返ってきた。紗菜も同じクラスだったから、当時の彼のことはよく知っているのだ。

『変わってた?』と聞かれ、見るともなく夜空を見上げて少しだけ考えを巡らせる。

外見はともかく、根本的な優しい部分は変わっていないけれど、時々意地悪になったり、グイグイ迫ってきたりするところは昔とはちょっと違うよね……。


「見た目はさらにカッコよくなったと思うよ。でも、キラキラ王子がエセ王子っぽくなった」

『なにそれ』


私の伝わりづらい表現に、紗菜は軽く笑ってツッコんだ。