──糖度高めな指南の予感に、不覚にも胸がときめいてしまった。

私の中にそんな愛らしい部分が眠っているのか、自分でも定かではないのに耀にはわかるというのだろうか。

ほのめかされる甘い空気に、あわや飲み込まれそうになった直後、彼は再びいたずらっぽく口角を上げて言う。


「これが僕なりの仕返し。いつも素っ気ない君の顔が、赤く染まるところをたくさん見させてもらうから。今みたいに」


キスされるんじゃ、というくらい近くに綺麗な瞳を寄せて見つめられ、顔が熱いことに気づくと同時に我に返った。

私、なにされるがままになっているんだろう。恥ずかしすぎる。


「い、意味わかんないことばっかり言わないで」


不本意ながら赤くなっているらしい顔を背けて耀の胸を押し返し、壁と彼の間から脱出した。

今の言葉でなんとなくわかった。耀は私を困らせて楽しみたいだけなのだと。そんな悪趣味に乗せられてたまるか。


「仕返しだかなんだか知らないけど、あんたの思い通りにはならないからね!」


無意識に自分を抱きしめるように腕を掴み、耀をキッと睨みつけて精一杯吠えてみた。

しかし、当の本人にはまったく効いている様子はなく、真顔で顎に片手を当ててこんなことを言う。