なにより嬉しいのは、優れたリーダーシップと人格、容姿までも兼ね揃えた若き社長、泉堂 達樹(せんどう たつき)にも認められ、彼の右腕としてお仕えできていること。

ただひとつ難点を挙げるとすれば、ハイスペックな彼と一緒にいるおかげで他の男性が霞んで見えてしまうことくらいだろう。

もうすぐ三十路に突入するというのに、結婚にはほど遠く、切ない独り身生活を送っている。だからと言って、婚活や合コンをする気にはならないのだが。

出社すると、まず受付の女の子が私に気づいて挨拶をしてくれる。


「綾瀬さん、おはようございます」

「おはようございます。今日は社長に来客があるので、よろしくお願いしますね」

「はい、わかりました」


気持ちのいい返事をする彼女に、私もふわりと微笑みかけた。だいたいの社員は、社長秘書ということで私の名前も覚えてくれていて、それが嬉しかったりもする。

社長室へ向かうまでの間に会う皆に、完璧な秘書のイメージを崩すことなく笑顔で挨拶をして、業務に勤しむ。いつもとなんら変わりない一日の始まりだ。