「ありがとうございます。Akaruさんのデザインは幅広い層の方々に人気ですから、いい相乗効果が生まれると期待しております」


今回の企画がうまくいきそうで、泉堂社長の声や表情には安堵と喜びが混ざっているように見えた。一方の私は、耀との打ち合わせが無事終わったことにホッとしている。

そのとき、社長がこちらにちらりと視線を向ける。


「綾瀬も昔からAkaruさんのファンだそうですよ」


突然話を振られ、耀とも目が合ってドキリとする。

いけない、気を抜いてしまっていた。いつもの秘書モードに戻さなければ、と瞬時に切り替え、「はい」と笑顔で答える。


「デザインはもちろん素敵なのですが、稀に描かれるイラストもとても好きで、見るとつい買ってしまうんです。ハンカチや、文房具……あっ、この自分用の手帳のカバーも」


Akaruの話をできることが嬉しくなり、私は意気揚々とバッグの中から手帳を取り出す。小さなプリンセスのシルエットが描かれたそれを、自分の顔の前で掲げてみせた。


「長年愛用させていただいているんです。この控えめなイラストが、もう可愛くて胸キュンもので……」