雪原の蛍



一面の銀世界。

そこに描かれる数多のシュプール。

山頂の赤い火が、雪原に降りてきた。
それはやがて窓辺に立つ女性に向け、愛のメッセージを描き出す。


最後尾にいた恋人が松明で形作られたハートの中央を射抜く矢となって滑り降り、
窓辺の女性に向けて片膝をついてから両手を挙げた。

女性は感激の涙にぬれ、コートもはおらずに外へと駆け出して恋人の胸に飛び込む。
恋人はしっかりと受け止め、熱いキスを落とした。

友人たちは二人を囲み、祝福の言葉と冷やかしを雨あられと降り注ぐ。



ミイナは幸せそうに笑い合う二人を友人たちの輪から少し離れて見つめていた

静かに微笑みを浮かべたまま、心の中に棲んでいた蛍の火をそっと消し去る

その亡骸は星のように美しい涙となり、ただ一筋、頬を伝って雪を溶かしたーーー






了。