「萌奈の言う通りだ。今日俺たちが集まった目的を忘れるな」
私のフォローをしてくれたしん兄は、黒縁メガネを人差し指で押し上げた。
ここに来た、目的。
みーくんのお見舞いと、それからもう1つ。
「そう、だな。じゃあ、話し合うか」
あず兄は気持ちを切り替えて、私の肩から手を離した。
「嘘の噂について」
目的のもう1つは、双雷と神亀を今もなお苦しめている問題の話し合いをすること。
その問題というのが、ランちゃんが流した偽情報の件なのだ。
各々のグループの悪い評判やら、双雷と神亀の敵対関係やら、特に上層部はお互いに憎み合ってるやら。
噂の内容は、嘘ばかり。
だけど、その嘘が本当かのように、噂好きな一般人に定着してしまっている。
「噂は収束できぬほど広まってしまっている。一人歩きして、次から次へと尾ひれがついて……我々だけではもう手に負えぬのだ」
「今更真実を主張しても、言い訳みたいになるかもね」
弱々しく頭を横に振るオウサマにつられて、バンちゃんも項垂れる。
下っ端たちの誤解は解けても、噂好きな一般人までは難しい。
いつか忘れ去られるまで、決して消えない。
これだから、噂というものは厄介なんだ。



