汚れのない笑顔を向けて、何の疑いもなく聞いてくる。


これだから。

もう。


みーくんって、ずるい。



甘いんじゃない。

甘ったるいんだ。



「……バカ……」



好き、ではない2文字が口からこぼれ落ちた。



耳の裏、耳たぶ、ほっぺの順に高熱に襲われていく。


どうにかなってしまいそう。



黙り込んでしまった私の赤面を覗き込みながら、みーくんは満足そうに笑みを深める。




「ほらな!」


「ほらな、じゃねぇよ!俺の前で堂々とイチャつくな!」


「姉ちゃんも赤くなっちゃダメ!!」


「翠と緋織は、今後萌奈に近づくな!」




あず兄、それはいくらなんでも無理難題すぎでは。

というか、ちゃっかりオリまで……。



他の皆が諫める隙も与えず、3人は私を間に挟んで、言い合いを始めてしまった。


特にみーくんは惚気を言いまくるから、心臓がいくつあっても足りない。ついでに鼓膜も破れそう。



……やめて、もうやめて!

恥ずか死ぬ!!



「ストーップ!!!」



パンッ!

手を叩いて、強制的に口論を鎮める。



「口喧嘩するためにここに来たわけじゃないでしょ?精神年齢下がったの?バカ騒ぎしたければ病院の外で思いっきりやったらいいよ」



早口で、息継ぎなしで注意した。


そのせいで口調がやや刺々しかったかもしれない。



「久々に毒吐かれた……」



あず兄の独白を最後に、しんと静まり返る。


やっと病院らしくなった。