バイクが動き出した。
だんだんとスピードを上げていく。
振り返っちゃいけない。
いけないよ、私。
だって、もう。
前に、進むんだ。
そう、決めたんだ。
あっという間に双雷の領域を抜けた。
不思議と呼吸しやすくなり、涼しい風に歓迎された気分だ。
迫る夕闇を追い越して、謎めいた月影を褪せさせる。
片翼が折れて、羽ばたけなくなったって、平気だよ。
私には足があるから。
大嫌いな色に彩られた空だって、走っていける。
想像以上に早く目的地に到着した。
せーちゃんが全速力で運転してくれたおかげだ。
入口前に一時停止されたバイクを降り、ヘルメットをせーちゃんに渡す。
「送ってくれてありがとね、せーちゃん」
「俺、ここで待って……」
「ううん、待ってなくていいよ。帰りは一人で大丈夫」
「ダメだ!」
「ボディーガードは、もういいんだよ。皆、自由になれたんだから」
皆、っていうのは、何もオリとランちゃんだけじゃない。
せーちゃんやあず兄……私だってそう。
やっと、“あの時”から止まっていた時計の針を、進められるんだ。



