絶対領域






なんとなく、空を見上げる。



青空を、夕日が飲み込んでいく。


群青を平らげたオレンジは、より濃く、深く、変化する。



「……紅の色だ」



光が残酷なほど鮮やかすぎて、目に沁みた。


嫌いな、色だ。

これ以上見たくもなくて、視界を下へずらす。




そっぽ向いた視界のフレーム、ぎりぎり。


騒がしい人の往来の流れに逆らう、ひとつの影を、見つけた。



「あ、れは……っ」


間違いない。

“あなた”の後ろ姿だ。



思考も、鼓動も、一時停止した感覚に陥る。




1週間前の路地で。

“あなた”は、私を拒んだ。



『知り合いでもなんでもない』



関わりたくない。

それが“あなた”の望みなら、叶えてあげたい。


……けど。


これが夢ではない証拠がほしい。




もう一度、“あなた”に会いたい。


わがままな私を、許さなくていいから。