絶対領域





「それがお前の、“昔”の恋だった」



え?昔……?


違う。

そんなことない。



否定したくても、やっぱり声は空を切るばかり。


オリの手はしっかりと口を塞いでるわけじゃないのに、なんで。




「“今”の恋は違う」



声が出ないなら、と頭を思い切り横に振る。


違くない。

変わってないよ。


私の“特別”は、オリだよ。



「お前も大概強情だよな」



呆れたみたいな言い方をしながら、長い指を輪郭に沿わせる。


“あの時”から変わってない、その下手な笑い方を、どうして今見せるの。



「なあ、萌奈。今、お前は誰に守ってほしい?」



守ってほしい人?

そんなの、決まって――。




『やっと、恩返しができた』




――オリ……じゃ、ない。



脳裏を過った笑顔をかき消したくて、再度頭を振った。


だけど、いつまで経っても消えてくれない。


それどころか、さらに色濃くなっていく。




私を、守ってほしい、人は……。




「それが、“今”の恋だよ」



耳の奥で溶け込む、透明な低い声。


けれど、脳裏で『萌奈!』と呼んでるのは、その声じゃない。



もっと高くて、無邪気な声。