「こんだけ人が多いんだから、ぶつかるのも無理はないだろ。頭を冷やせ」
「でも、あいつ、姉ちゃんにぶつかって謝んなかった!重罪だ!」
「俺だってイラついたが、いちいち相手にしてたらキリねぇだろうが」
我が幼なじみと弟よ。
その狭い心こそ、ギルティーだ。
「せーちゃん」
呆れながら呼べば、2つの眼が同時にこちらを向く。
そのヘーゼル色の瞳がなんの曇りもなく純粋だから、末恐ろしいんだ。
「こんなことでガチギレしないでよ。ただ肩がぶつかっただけ、謝ってくれなかっただけ。それだけのことでしょ?」
「でも……!」
「でもじゃない!わざとでもそうじゃなくても、マナーを知らないガキだな、くらいに思えばいいの。わかった?」
そう念入りに釘を刺したら、せーちゃんは渋々理解してくれた。
よし、これで一件落着だ!
「……萌奈ちゃん、そんなこと思ってたんだ」
「バン、今更つっこんじゃダメだよ。あの姉弟の毒舌はもう常識の範囲でしょ~」
「あはは、それもそうだ」
バンちゃんとゆーちゃんが後ろでコソコソ喋っていたけど、気にしないでおこう。うん、それがいい。



