ありがとう。
ごめんね。
ふたつの言の葉が混ざって、ひしめいて、溺れていく。
どうしたらこの感情をありのまま伝えられるのかな。
「蘭次郎」
ランちゃんの拳は、みーくんの手にすっぽりと収まっていた。
決してきつく掴んではいないのに、拳を引き抜こうとしない。
「俺は、お前の本音が聞きたい」
「……そういうとこが、甘ぇっつってんだよ……」
ずるずると、拳が下がっていく。
落下しかけた腕で、顔の上半分。
もう片方の腕で、顔の下半分を覆った。
さっきの雫をこらえてないといいな。
「……ほんとは、自分でも、戸惑ってたんだ」
少しずつ、少しずつ。
ややくぐもった呟きが、あふれる。
「嘘つく度にモヤモヤすんのも、ココで過ごすのが楽しいって感じるのも……ダメだって、わかってたのに」
やっと、聞けた。
ランちゃんの本音。
皆、待ってたんだよ。
「ごめんな」
みーくんの一言で、ランちゃんの両腕が顔横までも包囲した。
鼻をすする音がする。
「俺は総長として、裏切りをそのままにしておけない」
「ああ、わかってる。……わかってた。安心しろよ。もう双雷にも神亀にも近づかねぇし、お前らにも会わねぇよ」
隠していた顔が、ゆっくりあらわになっていく。
目元が赤い。



