絶対領域




みーくんはゆかりんの肩に回していた片腕をほどき、ふらつきながらもランちゃんの目の前まで前進する。


たったの数歩。

それでも、傷口に障ったようで、辛そうだった。



そんな状態にさせた原因のはずなのに、ランちゃんが誰よりも案じているのが誰の目にも明らかで。


みーくんはまた、一笑した。



「本当に、双雷のこと好きじゃない?ここに居たいって、少しも思わなかった?」


「俺は……っ」



たとえ、双雷の幹部としての“蘭次郎”が嘘で塗り固められていたとしても。


ここで感じたことは、嘘なんかじゃない。


一緒に築いた関係も、思い出も、嘘にはさせない。




「双雷の一員になって、本当に、蘭次郎は孤独だったか?」


「……黙れ」


「孤独だったら、ランちゃんが広めた偽情報を誰も信じてないよ」


「黙れよっ!!」




衝動的に振り上げられた拳……よりも。


目尻に浮かんだ雫に、目がいった。



「萌奈!」

「姉ちゃん!」


受け止める音と同時に、視界いっぱいにふたつの背中が入り込む。



「あず兄……せーちゃん……」



こんな時まで、私を守ろうとしてくれる。


ランちゃんらしくない弱々しい拳であったにもかかわらず、依然として盾のまま。



2人の背中が、大きくて、たくましい。