絶対領域





「怒ってないわけじゃないよ」



みーくんが応える前に、口をついて出た。


ランちゃんの双眼がビクリと弾かれるがまま、私を捉える。



「ランちゃんのせいで、クラスメイトが……ううん、大事な私の友達が、仲間が、大切な人が、たくさんたくさん傷ついた。心にも体にも、いくつもの傷がついた。それを簡単には許せないよ」



黒幕がランちゃんだから、なおさら。

今までの傷痕を、なかったことにしちゃいけないんだ。



いくら企んだ動機に胸が震えて、悲しくなっても、同情で許せてしまえるような優しい人間にはなれないよ。



「でもね、やり返そうとは思わない」


「なんで……。俺のこと恨んでるくせに」


「だって、そうすることが、ランちゃんにとって一番の罰になるでしょ?」



急所を突かれたみたいに、生唾を呑んだ。



私たちが背負ってきた苦痛を、ランちゃんが持っていて。


いつか許せる日まで。



嘘ついて裏切ってきた償いを、そばで見届けるから。




「……んなの罰じゃ、ねぇよ。どんだけお前ら甘ぇんだよ」


「もう、嘘はいいよ、蘭次郎」


「嘘なんか」


「本音を、言っていいんだよ」