絶対領域




真っ直ぐ見返して、3秒。

また、やるせなく滑り落ちた。


眼差し自体には、あんなにも敵意で満ちあふれているのに。



「ほら」



みーくんは1秒たりとも、目を逸らさない。



「やっぱ目ぇ合わないじゃんか」



みーくんはランちゃんより背が低いけれど、ずっと大きくて、大人びていた。


年上とか総長とか、そういうことじゃない。



声が、雰囲気が、優しくて。

冷たいランちゃんを、温めてあげてるよう。




「……なんでだよ」


「何?」


「なんで、お前ら、怒んねぇんだよ!俺が元凶だってゲロっても、何もしてこねぇし……。普通、裏切られたら憎むだろ!?俺を嫌うだろ!?」



着崩した学ランの上から、心臓のあたりを鷲掴みにした。


せっかくきまってたオールバックのヘアスタイルが乱れて、前髪が額にかかる。



「もっと怒れよ!喚けよ!戦って、騒いで、何もかもわからなくなっちまうくらいぶっ壊れちまえよ!!」


「それが、蘭次郎の本音か?」


「ああ、そうだよ!!」



間髪入れずに言い返す。


なぜか、他にも何か言いたそうに見えた。



漆黒の瞳に、点滅する星の色。

星座が作られることなく、下へ流れていく。



星屑となって砕けてしまいそうなほど、脆く儚い、淡い色。


さっきまでの殺伐とした迫力とは、大違いだ。