絶対領域





訴えたかった言葉も、伝えたかった本音も。


たくさんあるのに。

頭の中に羅列してるのに。



何も喉を通らない。


しいて無味な空気が行き交うだけ。




枯れ果てた静寂の中。


ランちゃんの息遣いに混じって、小さく響く。



たどたどしい足音。




……え?

足、音……?




「嘘だって、気づいてたよ」




この声って……。


反射的に、扉側に振り返った。



「みーくん!?ゆかりんも、どうして……?」



下っ端たちをかき分けて洋館内にやって来た2人に、皆して目を疑った。



ゆかりんに支えられたみーくんは、どこから見ても元気そうではなくて。


3日前の末路をありありと表していた。




「そ、総長……っ、なんで……」


「紫にわがまま言って、連れてきてもらったんだ」


「い、今までの話……聞いて……?」


「うん、聞いてた」




動転したランちゃんは、呼吸のリズムを狂わせていた。



「あ、でも、着いたのは今だぜ?凰が通話状態にして、ずっと聞かせてくれてたんだ」



オウサマのほうを向けば、こっそり携帯をズボンのポケットにしまっていた。


陰でそんなことしてたなんて、微塵も気づかなかったよ。さすがだね。




「なあ、蘭次郎」



拙い足取りでランちゃんに近寄っていく。


みーくんよりもゆかりんのほうが、心配そうだった。