あぁ、そうか。
きっと、ランちゃんも。
“あの時”に囚われてる。
「脱走者が女を連れて逃げてるって情報を聞いて、胸糞悪かった!その女と神亀の奴らを洋館に連れてこられて、憎らしかった!」
ランちゃんが叫べば、叫ぶほど。
まるで泣いているようだった。
「俺一人だけ取り残されて、孤独になって……ずりぃんだよ。俺がこんなに苦しんでるとも知らずに幸せそうにしてさ……」
幸せ、か……。
ランちゃんにはそう見えたんだね。
私には、昔も今も、本物の幸せを求めてるようにしか見えないよ。
「あんたを地獄に叩き落としたかった。だから、双雷と神亀を敵対させて、全部まとめて潰そうと決めたんだ!」
いっそう眼光がぎらつく。
しかし、すぐにかすんでしまった。
「でも、策略は失敗。紅組から追い出されて、紅組っていう肩書きも使えなくなって……俺は本当に居場所を失くしちまった。あんなに傷つけて、騙して……全部犠牲にしてまで裏切ったのに……っ」
不意に、指先の間を微風が通り抜けた。
同時にランちゃんが一歩、オリに近づく。
「なのに、なんで、あんたは何も奪われてねぇんだよ!俺のしてきた行動も、ついてきた嘘も、無駄だったのか……?」
「嘘……?」
「ハッ、そうだよ。双雷での俺は、偽者だ。総長に憧れてるっつーのも、人見知りも、流した噂も何もかも!あんたを孤独に追いやるための、真っ赤な嘘さ!!」
投げやりに吐き捨て、肩を上下に荒らす。



