「紅組は今でも、オリを狙ってるの」
「……それはちょっと違ぇな」
「え?」
横やりを入れてきたランちゃんを、怪訝そうに見入る。
何が違うの?
「紅組は、とっくに手を引いてる」
は?
何それ。冗談?
吐きかけた毒は、舌の上で溶けていく。
ランちゃんの表情が、あまりにも痛々しくて。
「ど、どういう、ことだ……?」
「脱走は裏切りだから、紅組はあんたを捕まえようとしたわけじゃない。裏切り者が幹部以上だったら、そうだったのかもしれねぇが、今回の脱走者はただの下っ端。正直どうでもよかったんだ」
一番衝撃を受けているオリに、不愛想に告げていく。
「だが、情報漏洩されては、紅組でも危ない。だから、あんたを捜してたんだ。……でも、あんたはただ逃げているのみ」
逃げるしかなかった。
それ以外、できなかった。
オリが望んでいたのは、紅組を敵に回すことじゃない。
そんなことよりも、もっと、純粋で些細な願いだったんだ。
「あんたが紅組を脱走してから今まで、紅組の情報が露呈されることは一度もなかった。1年追いかけっこを続け、あんたが海外に逃げた時、それを確証した組長は、脱走者を捕らえろという命を下げたんだ」
……それじゃあ、オリは。
もう、自由になっていたの?



