絶対領域




ようやく待ち人が到着した。


全速力で来てくれたらしく、私の元まで寄ると、せーちゃんは肩で呼吸を繰り返した。



「ま、待たせて……ご、ごめ……」


「全然待ってないよ」

「すんごーい待った!待ちくたびれた!もうっ、遅いよー!」



私と正反対のことを言うゆーちゃんを、せーちゃんはきつく睨んだ。



「うっさい」


「何その態度。年下のくせにムカつくぅ」


「そこ、喧嘩すんな」



しん兄が、火花を散らす2人の頭にチョップをかました。

うわ、痛そう。



よしよし、とせーちゃんの頭を撫でてあげれば、たちまち表情が柔らかくなっていく。


私の可愛い、可愛い、弟。



せーちゃんこと、矢浦 世奈【ヤウラ セナ】。


中学3年生の成長期。

つい最近まで、おんなじ背丈だったのに、気づけば約8センチも差をつけられてしまった。


ハイトーンの黄緑色に染まる髪の毛は、毛先にいくにつれ、モスグリーンへと移り変わっていく。


重めの前髪は、左目を若干覆っている。



ちょっとひねくれてて、他人には毒舌を吐いてしまう時もあるけど、私にはとても甘い。


過保護なシスコンなんだ。

……ちょっとあず兄に似てるかも。