絶対領域




目つきの悪い、金色の瞳。


両サイドを刈り上げた、アッシュグリーンに染まるオールバック。



3日前と同じ、嫌な顔をしてる。




「ランちゃんが元凶なんでしょ?」


「元凶って……え、まさか、蘭次郎が裏切り者……?」



せーちゃんが小さく小さく漏らした。


異様な静けさの波に、その独白は迅速に広がっていく。



振り返らなくても汲み取れる。



せーちゃんも、他の皆も、下っ端たちも、騒ぎ立てる元気もなくぐらついてること。


傍観しているだけだった、あのオウサマでさえ、悠然さを装えていない。




「……は?裏切り者……?」



後方で、ポツリ。

双雷の下っ端の1人が、呟く。


それを皮切りに、彼の仲間たちが口々にこぼし出す。




「蘭次郎さんが?」


「俺らの、幹部が……?」


「何、言って……」


「そんなの妄言だ!くっだらねぇ嘘ついてんじゃねぇよ!」


「蘭次郎さんが裏切るわけねぇ!!」




荒げた主張は、どれも震えていた。


そうだよね。

信じられないよね。


あなたたちは私を敵だと認識しているようだけど、私だっておんなじ気持ちなんだよ。



本当にランちゃんが無実なら。

どれほど幸せか。