正直視界良好じゃないし、風強いし、バイク速いし、安定感皆無だし。
文化祭前夜ほどの威力は出せないだろうけど、やるっきゃない。
下っ端たちを食い止めなければ!
神経を尖らせ、集中力を研ぎ澄ませる。
左手は力ませず、緩すぎず、ちょうどよく。
洋館の扉に手をかけかけた神亀の下っ端を、ロックオンする。
ふぅ、と息を吐いて、大きく左腕を上げた。
「ぉぉおりゃあぁっ!!」
女子らしからぬ発声だって?
どうせエンジン音と下っ端のうるささで聞こえてないよ。
下っ端たちめがけて、全力でヘルメットを投げ放った。
ヘルメットは目にもとまらぬ速さで、宙を直進していく。
ドンッ!!
狙い通り、立派な扉に衝突した。
「うわっ!?な、なんだ……!?」
跳ね返ったヘルメットを避けた下っ端は、否応なく数歩後ずさる。
反射的にヘルメットが飛んできた方向に目をやった。
「あ、あれは……っ」
「総長!?それに、副総長、幹部のメンバーまで……!」
「萌奈さんまでいるぞ!」
「なんで萌奈さんが……記憶を失って入院してるはずじゃ……」
やった、こっちに気づいてくれた。
これで行動を抑止できる!
タイミングよく洋館前に到着した。
バイクから降り、下っ端と向かい合う。
ここで下っ端に訴えかけて、闘争心を失くす。
……それは、3日前の対立でしようとしたこと。
今日は違う。



